Nostalgia Part3

まだ私がほんとうに小さかった頃

冬になると炭の掘りごたつに
甘酒を作るための麹がいつも入っていた

蹴飛ばさないようにそっと潜り込んで
祖母の話に聴き入っていたあの頃

掘りごたつと昔ばなしは私の中でワンセット





「小泉山」と「大泉山」

ずっと、ずっとむかしのお話です。
おおやまづみの神という山をお作りになる神さまに、ふたりの娘さんがありました。
ひとりの娘さんには富士山を作って住ませました。もうひとりの娘さんには、浅間山を作って住ませようと、諏訪の土をごっそりと運びました。そのために、諏訪の土地に、大きな大きな穴が、ぽこんあきました。

蓼科山は八ヶ岳の妹でした。
蓼科山は、諏訪富士とも呼ばれています。すうっと、手でなぜたようになだらかでやさしく美しい姿だからです。
困ったことに、蓼科山は、兄さんの八ヶ岳が、富士山にけ飛ばされてから、ずうっと泣きっとおしです。
「おにいちゃんがかわいそうだ……富士山よりひくくなっちゃった。」
あたりかまわずに、大声で泣きました。
「蓼科山ちゃん、泣くのはやめよう。」
まわりのものが、やさしく慰めましたが、慰めれば、慰められるほど、なおいっそう大声を張り上げるので、本当に始末に負えません。
「きれいなおにいちゃんが、のこぎりのように、ごつごつになっちゃった……おにいちゃんがかわいそうだよ」
朝から夜まで、泣きじゃくりました。大きな蓼科山の両方の眼からは、どくどくと涙が流れました。とうとう音をたてて蓼科山の裾をはしり、ひとすじの川になりました。そして、諏訪の土地のへこんだ所へ、どんどんと流れ込みました。たまげたことに、蓼科山の涙はたまって、ついに諏訪湖になりました。
ちょうどその頃、「でいらぼっち」という、とてつもない大男が、どこからか現れました。
背の高さは雲をつんぬけ、座ればおしりの下は、四キロ四方がすっぽりかくれ、ひと歩きの幅四キロというえらくでかいやつです。
「やいやい、えれえことになったぞ。あんなとこへ湖ができたぞ……。おれが一度に埋めてやるわえ。」
諏訪の土地が湖になってしまったのを見つけて、怒鳴りました。
でいらぼっちは、えいっと、大きな手で二度三度八ヶ岳を削り取って、土の山をひともっこ作りました。
また、二度三度、軽くつかみ取って、もうひともっこを作りました。ふたつの大きな山のような土のかたまりが、たちまちできました。
なにしろ、諏訪湖を埋めようというのですから、たくさんの土です。
「よーし、これでいいぞ……。」
おんがら(麻殻)の天秤棒で「う〜ん」と一唸りしました。でいらぼっちは、ふたつのもっこの土を、軽々と担ぎました。
そして、お線香の杖をついて八ヶ岳のふもとから、諏訪湖を目指して急ぎました。まるで、ふたつの山が空を歩いているようです。しばらく行った時でした。おんがらの天秤棒が、真ん中からポッキンと折れました。「ドッサーン」ふたつのもっこの土は、どっすわりました。
「やあやあ、いけねえことした。」
でいらぼっちは、頭をかきかき、神の原村へ行きました。
「おーい、おんがら一本くれや。」
と、頼みましたが神の原村には、あいにくありません。したかなく粟沢村へ行ってもらいました。
大慌てで、引き返し、「よいしょ、よいしょ。」と担ぎ上げようとするのですが、もっこはびくともしません。
「こりゃ、おかいしぞ。」
肩にかけ直し、足をぐんと踏ん張って、何回もうなりましたが、やはりだめです。ふたつのもっこの山は、すっかり地に引っ付きました。
しょうがないので、ふたつの山を粟沢村へくれました。
でいらほっちは、どこかへ行ってしまいました。

いま、茅野市玉川、泉野、豊平の境に、少し間をおいて、ふたつの山が並んでいます。でいらぽっちが八ヶ岳を削り取って、かついできたもっこの山です。
諏訪湖に近い方が、小泉山です。八ヶ岳によったのが、大泉山です。

お話 諏訪郡原村柳沢 清水住作さん
「諏訪のでんせつ」 竹村良信著


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(あずさ13号 車窓より)
by windsong_y | 2009-01-19 20:03 | 風景 | Comments(8)
Commented by skimama at 2009-01-20 00:24
昔話の読み聞かせ、声を出して読んでしまいました。
月に一度、私は大人のための「絵本をたのしむ会」をやっています。
それぞれが持ち寄った絵本をそれぞれが読むのです。
三年になります。だからね、こういうお話は嬉しくて、ついつい声を出して読んでしまうのです。
あずさ13号の車窓からの山々が、イメージを掻き立てます。
嬉しい時間をありがとうございます♪
Commented by howdygoto2 at 2009-01-20 12:51
車窓からの風景、とっても素敵です。
僕の小さい頃も炭の掘りごたつでした。
こたつの布団を被って寝ていて、
一酸化炭素中毒になった怖い経験があります。
Commented by kuma-boo at 2009-01-20 12:55 x
ノスタルジックないい風景ですね。
これはまた面白いお話です。
声を出して読みたい感じですが会社なので「とうとうボケたのか」と言われるても困ります…(笑)
蓼科山から諏訪湖が出来たのですね。
蓼科山は大好きな山です。御泉水自然園には何度も行きました。

Commented by windsong_y at 2009-01-21 19:13
skimamaさん
わー、嬉しい♪ 声を出して読んでくださったんですか ?
私もskimamaさんのコメントを読んでから、声を出して読んでみました。楽しかった〜〜〜♪
これからはたまには音読もしてみようかしら

大人のための「絵本をたのしむ会」それもなんて素敵なんでしょう〜、私も参加してみたいなぁ ^^
Commented by windsong_y at 2009-01-21 19:15
howdygotoさん
やっぱりhowdygotoさんも掘りごたつで育ったんですか ?
一酸化炭素中毒とは大変だったわね〜、私は炭の上の金網に足をのっけて熱い思いをしたことがありますよ〜〜
懐かしい思い出ね ^^
Commented by windsong_y at 2009-01-21 19:16
kumaさん
会社でみなさんに読み聞かせをしてあげてくださいよ、お昼休みに盛り上がるかもしれませんよ〜(〃^∇^)o_彡☆あははははっ
蓼科山もとっても綺麗な山ですものね、私も大好きな山です。
といいましても、私は下から見上げて「わ〜、綺麗」って感嘆の声を上げているんですけどね ^^
Commented by bashlinx at 2009-01-24 23:32
これは面白い^^こういう伝承を紐解いて行くとまた面白いんですなぁ^^
Commented by windsong_y at 2009-01-26 07:25
bashさん
言い伝えられてきた伝説っていいですよね。
自然が自然の力で変わってくる事は意味がありますが、人が壊す自然はいただけませんね、bashさんの自然に対する真摯な気持ち、心から応援してますよ〜♪


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